夫の目の前で彼とキスをする——夫の願いを叶えた夜から始まる、夫公認NTRの官能小説です。最初はゴムが必須だった関係が、お互いの信頼が深まるなかで、少しずつ変わっていきます。肉体の描写だけでなく、感情の揺らぎを丁寧に書きました。登録不要、スマホからも全文お読みいただけます。18歳未満の方はご遠慮ください。
夫の目の前で、
彼とキスをした
「健二くんとキスしてるところを、見せてほしい」——夫の静かなお願いを、私は断らなかった。リビングのソファ、夫の視線、彼の唇。最初はゴム必須だった私たちが、夫の許しと約束のなかで、少しずつ信頼を積み重ねていく一年の記録。
この作品は官能小説の部屋に収録されています。他のテーマ(婚外恋愛・NTR・倦怠期)の作品も登録不要で読めます。
夫のお願い
夫がその話を切り出したのは、日曜日の夜、食器を洗い終えたあとだった。
「ひとつ、お願いがあるんだけど」
和也は台所の端で、ふきんをたたんでいた。目は合わせない。けれど、逃げている感じもしない。大事なことを言う前、この人は必ず一度ふきんをたたむ。結婚して十二年、その癖は変わらない。
「健二くんとキスしてるところを、見せてほしい」
息子はもう眠っていた。換気扇の音だけが、台所に残っていた。
「ここで?」
「うちで。ちゃんと、俺の目の前で」
夫の望みを知ったのは、結婚三年目の夜だった。妻が他の男に抱かれる姿を想像すると、胸が苦しくなる。苦しいのに、身体は熱くなる。そう打ち明けられたとき、私は笑えなかった。笑わずに、ただ聞いた。
あれから九年。夫公認の関係が始まって四年が過ぎていた。健二とは、付き合って三か月になる。
「いやなら、断ってくれていい」
夫は、そう付け足した。いつもそうだ。お願いのあとに、必ず逃げ道を置く。
「いやじゃない」
自分でも驚くほど、すぐに声が出た。
「ただ、健二に聞いてみる。彼がいやなら、しない」
「うん。それでいい」
夫は小さく息を吐いた。ふきんをたたむ手が、まだ止まらなかった。
リビングのキス
健二は土曜日の夜七時に来た。息子は夫の実家に泊まりにいっていて、家には私と夫しかいなかった。
玄関で靴を脱ぐ彼の背中が、いつもより少しだけ硬い。
「お邪魔します」
「どうぞ。ビール、冷えてるよ」
夫の声は穏やかだった。三人でテーブルを囲んで、乾杯をした。話題は仕事のことや、先週見た映画のこと。誰も、今夜の本題には触れなかった。
ビールが二本空いたころ、夫がグラスを置いた。
「じゃあ、お願いしてもいいかな」
健二が私を見た。私はうなずいた。
ソファの前に立つと、膝がかすかに震えていた。夫はソファに深く座って、私たちを見上げている。その視線が、肌の上をゆっくり這うのがわかった。
「夜子さん」
彼が小さな声で呼ぶ。両手が、私の頬を包んだ。
最初のキスは、触れるだけだった。唇と唇が、ほんの少し重なる。それなのに、背中の産毛が逆立った。
「もう一回」と、夫が言った。
二度目は、深かった。彼の舌が唇の隙間に入ってきて、私の舌をさがす。ビールの苦みと、彼の体温。腰に回された腕に引き寄せられて、胸が彼の胸にぶつかった。
ソファのほうから、夫の呼吸が聞こえた。浅くて、少し乱れている。
その事実が、舌の動きよりも深く私を濡らした。
唇が離れたとき、糸のような唾液がほどけて落ちた。私は肩で息をしていた。
「夜子」
夫が低い声で呼んだ。
「すごく、きれいだった」
目が、少し赤かった。ズボンの前が張っているのが、見えてしまった。夫は気づいて、恥ずかしそうに笑った。その笑い方が、結婚前と同じで、胸がぎゅっとなった。
「続き、してきて。俺は、ここにいるから」
「いいの?」
「いい。帰ってきたら、全部聞かせて」
ゴムの約束
寝室のドアは、少しだけ開けてあった。夫がそう望んだ。
健二はベッドの端に腰かけて、私の手を取った。
「夜子さん。ゴムは、約束どおりに」
最初に決めたのは夫だった。付き合いはじめる前、三人で話した夜に、夫が条件を三つ出した。ゴムを必ず使うこと。会った日は夫に報告すること。夜子が少しでもいやなら、その場で止めること。
健二は、その三つを一度も破ったことがない。
ブラウスのボタンを、彼の指が一つずつ外していく。下着の上から胸をつつまれて、思わず声がもれた。リビングに聞こえているかもしれない。そう思うと、喉の奥で声を噛んだ。
「声、聞かせてあげたら」
耳もとで、彼が言った。
「和也さん、きっと喜ぶよ」
その一言で、箍が外れた。
彼の唇が首筋から鎖骨へ降りて、胸の先を舌でころがす。もう片方の手がスカートの中に入って、下着のふちをなぞる。濡れているのが、自分でもわかった。
「夜子さん、すごい」
「言わないで……」
指がゆっくり入ってくる。奥の、感じるところを知っている動きだった。腰が勝手に浮いて、シーツをつかむ。
「入れていい?」
「うん。早く」
彼がベッドサイドの小さな箱を取って、袋を破いた。薄い膜の音が、静かな部屋でやけに大きく聞こえた。
彼が入ってきたとき、私は夫の名前を呼びそうになって、唇を噛んだ。
あたたかくて、ゆっくりで、深い。ゴムごしでも、彼の形ははっきりわかる。奥を押されるたびに、頭の中が白くなる。
そう思うだけで、いつもより早く、波がきた。
「もう、だめ……」
「いいよ。いって」
全身が震えて、脚が彼の腰に絡みついた。声は、もう隠せなかった。
そのあとのことは、あまり覚えていない。彼の汗が私の胸に落ちて、彼もしばらくして低く息を詰めた。
リビングに戻ると、夫はソファに座ったまま、冷めたお茶を握りしめていた。
「ただいま」
そう言った私を、夫は何も言わずに抱きしめた。手が、少し震えていた。
その夜、私は夫に抱かれた。健二の匂いが、まだ肌に残っているうちに。夫は、私の身体のあちこちを確かめるように触れて、何度も私の名前を呼んだ。
こんなに熱い夫は、いつぶりだろう。
ゴムを外した夜
ゴムは、それから半年のあいだ、一度も外れなかった。
会う回数が増えて、三人の距離も、少しずつ近くなっていた。健二は変わらず約束を守っていたし、夫も、帰ってきた私の話を、いつも静かに聞いてくれた。
ある夜、ベッドの中で、夫が天井を見たまま言った。
「ゴム、外してもいいんじゃないかな」
私は、夫のほうを向いた。
「夜子は、アプリで基礎体温をつけてるだろ。危険日さえ避ければ、ってことで」
「……いいの?」
「いやだったら、言ってない」
夫は少し笑って、私の髪に指を通した。
「俺は、夜子が決めたことを、一緒に背負いたい。ただ、ひとつだけ。危険日は、必ずゴム。それか、しない。そこだけは守ってほしい」
「うん。守る」
「それから、いやになったら、いつでも戻せるようにしよう。生でしないことは、いつでも選べる。それだけは、忘れないで」
胸の奥が熱くなった。許されているのではなく、守られているのだと思った。
翌週、健二にその話をすると、彼はしばらく黙っていた。
「……本当に、いいんですか」
「うん。和也と、ちゃんと話したから」
「じゃあ、アプリの記録、見せてもらってもいいですか。危険日、俺も一緒に覚えておきたい」
その言い方が、なんだかおかしくて、私は笑ってしまった。三人で、同じカレンダーを見ている。それが、いつのまにか普通になっていた。
危険日以外は
最初の夜のことは、忘れられない。
危険日をきっちり外した金曜日。ホテルの部屋で、彼が小さな袋を手に取ろうとして、私を見た。
「夜子さん、本当に、いい?」
「うん。そのまま、来て」
彼がゆっくり入ってきた。ゴムのないその感触は、あまりにも生々しくて、私は思わず彼の肩に爪を立てた。熱い。やわらかい。直接伝わってくる脈の動きまで、わかる。
「だいじょうぶ?」
「だいじょうぶ……すごく、いい」
涙が出た。気持ちよかったからだけじゃない。三人で積み上げてきたものの重さが、一度に押し寄せてきた。
帰ってから、夫に全部話した。夫は目を閉じて聞いて、最後に「ありがとう」とだけ言った。それから私を、長く抱いた。
あれから、季節が一つ変わった。
いまでは、危険日以外は、生でするのが普通になった。ゴムの箱は寝室の引き出しの奥にあって、危険日のたびに、そっと取り出される。
今夜も、リビングのソファには夫がいる。
私は健二の膝の上で、彼のシャツのボタンを外している。ふたりの唇がふれると、ソファのほうから、夫の呼吸が聞こえた。
「夜子」
夫が呼ぶ。
「今日は、大丈夫な日だよな」
「うん。三日前に、記録したとおり」
「そうか」
夫は、静かに笑った。
健二の手が、私の腰をゆっくり引き寄せる。
「夜子さん」
「うん。……来て」
寝室のドアは、今夜も少しだけ開いている。
夫の視線が、背中を撫でていく。その視線を感じながら、私は、愛されている、とはっきり思った。